地震があって③
お腹を空かせた子供たちが
夜ご飯をせがむ
ごくごく当たり前の家庭のシーンだが
この日は災害初日
しかしそれを感じさせないほど
場の空気は落ち着いていた
ラジオの音がそれらしさを
演出しているように感じた
大きい円卓に大量の白米と汁物
それからおかずが並べられていた
白米をよそう人
汁物をよそう人
箸を並べる人
それぞれがそれぞれの役割を
なんとなくこなし
円卓に均一に並べられた10人ほどの
ご飯セットの出来上がり
大家族のような感覚
いただきます!
午後は16時か17時あたりだっただろうか
まだ外は暗くない
停電はまだ進んでいる
夜に備えてロウソクを用意しよう
そんな事を考えながらご飯を食べる
よほどお腹が空いていたのか
無言で食べる大家族
しかしながら
円卓で食べるその空間は
本当に豊かさの象徴のような光景で
被災したという感覚はほぼなかった
外が暗くなってきた
いよいよ明かりのない時間を過ごすのか
と考えていた矢先に電気はついた
あまりにも早いライフラインの復旧に
電力会社の方に
心から感謝の気持ちがこみ上げた
ほかの区ではまだ停電が続いてる所もある
僕らは幸運なことに
早くもライフラインが整った
ご飯を食べ終わると
その日の僕の記憶はほぼない
よほど疲れていたのか
気を張っていたのか
寝ていたわけではないが記憶がない
6日の日はそれほどに鮮明に色濃く
心に刻まれた日であった
その反動なのか、電気がついてから
僕はどこかで安堵していたのだろう
それまで鮮明に記憶があるのに
ポッカリ抜けている
2日目の朝を迎える
寝ている時にいくらか余震があったか
揺れた記憶がある
一度大きい地震を経験すると
少しの揺れで動悸がする
身体が覚えてるのだろうか
瞬時に身体がこわばるのがわかる
僕らの共同生活は奇妙なほどに円滑だった
誰も指示することなく
適切なタイミングで適切なことが行われた
誰か1人に偏ることなく
ご飯はなぜか代わる代わる作っていった
たくさんの食材たちの持ち寄りは
余るほどにあり
全く困ることはなかった
奇妙なこの大家族の生活は
今後の未来の形なのかと思うほどに
無秩序の中の調和を生み出していた
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