陽ちゃん物語の第3話 肥える
父は入退院を繰り返しながらも
なんとか職場に復帰した
当然北海道庁ではない
仕事の量と責任の少ない新しい職場だ
今でも父はいう
「北海道庁には近づきたくない」と
振り返れば僕の性格というものは
典型的な内弁慶であった
家族の中では人の話などきかない子供
自由で短気、プライドの高い気分屋
一歩外に出れば行儀のいいシャイボーイ
ただ幼稚園の時はそんな内弁慶な性格ながらも
一人でいる人間はほっとけない
「一緒に遊ぼう?」と声をかける奴だった
今思えばその時期から人の心に興味がある
そんな少年陽介は小学生になる
小学校は家から徒歩3分ほどにある
北海道江別市立大麻小学校
低学年と高学年で入り口が違う
春は桜、秋は紅葉が綺麗な所だった
低学年側の入り口を入ると真正面に体育館がある
体育館を正面に左へ曲がり突き当たりを左
そこに1年1組と2組の教室が並んでいる
僕は1組、その後6年間ずっと1組だ。
帽子の色は赤。白組は憎っくき敵だ。
僕はコミュニケーションが苦手だった
当時どのくらい友達がいたからわからないが
多くいた記憶はそんなにない
僕は先生に怒られないようにじっと座って
先生に当てられないように下を向いて
真面目に授業を聴くような子供だった
答えられなかったらどうしよう
みんなの前で喋るのが恥ずかしい
注目されるのが嫌だ
けどどっかでひょうきんな奴や頭のいい奴や
ヒーローのようにキラキラした奴に憧れていた
僕は自分を表現するのが苦手だった
僕は小学3年生の時に
バスケットボールを習う
通称ミニバス
兄の友達がに憧れバスケをはじめる
ミニバスに入る前に一度練習を見学した
初めて入る夜の体育館は
オレンジ色の照明が眩しい
なんやかんやとみんなで声をだし
ボールのダムダムという音と
先生の笛の音が響く
見学の際に少しだけ練習に参加させてもらった
ボードにボールを当てリバウンドをし
ゴール下でシュートした
その後はフリースローの練習をした
ゴール下のシュートは入った
フリースローは入らない
なんとなく
その入った入らなかったの感覚が好きだった
こうやったら入るかもと頭の中で考える
他の人の方が上手いのは当然だが
なんとなく自分だけ入らないのが悔しい
その1回の見学でミニバスへ入ると決めた
シュートをもっと決めたいと思った
なんとなく出来ると思ったのだ
母にそれを伝えるとビックリしていた
僕が外の世界で何かしたいと言ったのは
初めてだったからだ
そして母は「やってみなさい」と
僕に微笑みかけ肯定してくれた
思春期に入る前というのは
なぜだか自分の容姿を気にならない
あの人と仲良くなれたとかなれなかったとか
そんなもので別に自分の性格がどうとか
容姿がどうとか気にしたことはない
当然僕もミニバスに入る前まで
気にしたことがなかった
僕は太っていた
その事実を知りそれを意識したのが
その後ミニバスに入った時の経験だった
僕はいじめられた
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